ワープステーション江戸 ロケ施設運営事業 ゼネラル・プロデューサー 天野 信夫さん

ワープステーション江戸 ロケ施設運営事業 ゼネラル・プロデューサー 天野 信夫さん

  • 2009年6月13日 
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ずっと裏方業務一筋で、映像の世界に携わってきた天野さん。この長い仕事の終着地に新しい風が吹くことが夢。
遥か彼方の高みからワープステーションに吹く風が、新しい時代を作ろうとしている。

江戸城の城下には商人たちが行き交う大店街。長屋にはつつましくも賑やかに庶民の暮らしがある。沿道を駆け抜ける馬、どこまでも晴れ渡る空にゴイサギが羽を広げて飛んでゆく。つくばみらい市に再現された江戸の町「ワープステーション江戸」。
その街を小屋番として守り続けている人たちがいる。

 

【みんなが協調し合って】

天野信夫さんは、長年NHK他のテレビ局で美術制作を手掛けてきたが、ワープステーション江戸では映画やテレビ等のロケ施設運営として、より良い映像が撮れる空間や、俳優さん・スタッフ達の仕事がやりやすいように常に環境を整備する仕事をしている。ワープステーションで撮影を希望する制作会社やプロダクションの撮影が重ならないように調整するのも仕事のひとつ。「映像の仕事は、一般に公開されるまで、実に大勢の人が関わり、俳優さんや演出、プロデューサー、カメラマン、美術、照明など細かく言うと100種以上の仕事のコラボで出来上がる。私もその中の一人であることに間違いないし、ロケに参加していることは嬉しいと思います。だから、ここにロケに来る人達には自分の仕事場(撮影所)と思ってワープを大切にして欲しい。同じ業界同士、譲り合いと協調をお願いしています。結構皆さん理解してくれていますので、今までトラブルは一度もありません」と笑いながら語ってくれた。

 

【裏方の仕事を続けて】

もともとどうしても、この裏方がやりたくて入った訳ではない。思えば勉強嫌いのくせに、あそこの大学でなければだめだと分相応のことを言ったり、さりとて何をやりたいと言うこともなく、就職活動にも積極的になれず彷徨っていた頃、友人の先輩が俳優座のプロデューサー(今は無き恩人の一人)を紹介してくれた。
「そこから50年以上、舞台・テレビ・映画とジャンルは違っても裏方の仕事にどっぷり浸かってきたのだから、よく言う人の運命なんて何で決まるか分かりません。よほど、裏方が性に合ったのでしょう。好奇心が多く、どちらかというとむら気のある自分だから、こんなに長く続いているのは我ながら不思議です(笑)」。『継続は力なり』様々な苦楽があり、素晴らしい人生とまでは言わないが、普通に家族が持てたし悪くはない人生と思っているそうである。
裏方一途のおかげで、多くの良き人達と出会え、仕事では国内はもとより海外ロケでいろいろな国にも行った。「裏方家業で人生を学べたし、だからワープステーションにもスリップ出来たのでしょう。今、仕事を通じて出会った仲間の経験・能力が、私のワープステーションのロケ業務に絶大なる後押しをしてくれているのも事実です。だから、仲間を失わないよういつまでも裏方精神は持ち続けたいし、小屋番もしっかりと守っていこうと思います。それが恩返しですね。でも、この歳になると歯が抜けたように仲間が少しずつ居なくなるのも寂しいことですね」と天野さん。

 

【ロケが地域に果たす役割】

ワープステーション江戸は、茨城県南の整備構想(メディアパークシティ計画)に基づき先行事業として建設が始まり2000年4月にオープンした。江戸時代を再現した建物は、考証も正しく開園当時から時代劇の撮影が出来る場所として話題に上っていた。NHK制作の大河ドラマ・土曜時代劇や民放の大型時代劇撮影が行われたり、映画では北野監督『座頭市』山田監督『武士の一分』滝田監督『壬生義士伝』篠田監督監修『あかね空』崔監督『血と骨』他大作が撮影され、ワープステーションでの時代劇撮影が話題となり、問い合わせも増えていった。
オープン当初のテーマパーク型施設からロケ中心の施設になり「茨城県・つくばみらい市・そして今運営をしている県開発公社のロケをメインとした運営転換の英断があったおかげで、新しい撮影の基地として、さらに充実した撮影場所に再生されようとしています」と天野さん。また、近隣には自然豊かなロケ地が数多くあり、地域のフィルムコミッションに期待する映像制作者たちも多い。つくばみらい市エキストラの会はいまや撮影にはなくてはならない地域からの助勢になっている。また、施設内のセットは地元の大工さんによるものであり、撮影隊の弁当も地元で手配するなど「地域の皆さんの協力のおかげで撮影がスムーズに進行する。ワープステーション江戸を拠点に、この街に多くの撮影関係者が訪れて街がにぎわう。地域ぐるみで映像の街を作っていけたらと思います。時には、映像の立場で物を言って“がちんこ”(真剣勝負)することもありますが、理解しあうことが大切だと思っています。私たちは撮影を理解してくれる地域の為にお手伝いをするだけです」。

 

【I have a DREAM】

ワープステーション江戸が出来てから10年以上が経ち、その年数はまた、天野さんの月日でもある。「たくさんの人達が去り、また何人かの新しい出会いがありました。その中でも変わることなくワープステーションの小屋番を私と一緒に頑張ってくれた人もいます。私も70歳を越えて、今はなんとなく、自分の去り際を見失ってしまったか?とつくづく感じる時もありますよ」。
天野さんがワープステーション江戸でロケの仕事を始めた時、この場所がスタジオや撮影に必要なハード・ソフト機能を持った本格的な時代劇の撮影場所になり、多くの良い時代劇が創られていくのを夢見ていたという。その夢は今でも捨てたわけではない。
この頃「昨日テレビでワープステーション江戸で撮影した作品を見た」「映画を見たら、多くのシーンでエキストラの会の人達が大勢出ていたよ」と様々な声が聞かれ、嬉しく思うと天野さん。「こんなに評判になっているワープステーション江戸だから、将来は必ずロケの仕事を一緒にしてきた若い力が、この仕事を引き継いで、夢を実現してくれると信じています」。

 天野 信夫 Nobuo Amano

NHKエンタープライズ・ロケ施設運営事業業務委託・ゼネラル・プロデューサー
1936年山梨県生まれ 俳優座舞台美術部から、俳優座スタジオ劇団「三期会」制作部を経て1962年(株)NHK美術センター(現NHKアート)へ入社。大河ドラマ・朝の連続テレビ小説等ドラマの美術業務を担当後、外部事業部に移行民放テレビドラマ、TBS3時間スペシャル「海は甦る」他「時間よ止まれ」日本テレビ渡辺淳一シリーズ「氷紋」「野わけ」他多数のテレビドラマと映画、篠田監督「はなれ瞽女おりん」他の美術制作・進行に携わる。
その後、つくばみらい市にあるワープステーション江戸の立ち上げから関わり、映画・テレビドラマ・時代劇などのロケ誘致を担当して今に至る。

■歴史公園ワープステーション江戸

入園料/大人400円、小人200円(15名より団体割引あり)
休園日/月曜日
開園時間/夏季(4〜10月)9:30〜17:00(最終入場16:30)
   冬季(11〜3月)9:30〜16:00(最終入場15:30)
〒300-2306 茨城県つくばみらい市南太田1176
TEL/0297-47-6000 FAX/0297-57-1241
URL/http://www.wsedo.co.jp
ホームページにて団体料金で入園できる割引券配布中(有効人数5名)

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シンヴィング編集部

1994年創刊の地域情報紙シンヴィング。 もっと『守谷』『取手』『つくばみらい』を合言葉に茨城県南地域の情報をお届けします。

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