藤代太極拳協会会長 大沼 富子さん
ゆったりとおおらかに
今年20周年を迎えた藤代太極拳協会は、30代から70代まで幅広い年齢の会員が約160名、11の教室で学んでいる。2007年に開催された「ねんりんぴっく茨城」では、取手市で太極拳の競技が行われ、全国64チームの中で「ポピンズ藤代」チームが準優勝を果たした。その後も「ねんりんぴっく北海道2009」「ねんりんぴっく石川2010」に茨城県代表として出場。来る10月31日(日)には20周年記念大表演会が行われる。
緩やかでのびのびと、流れるようにゆったりとした動きで行われる太極拳。指先、足の先まで神経が行き渡るように、身体の隅々まで意識しながら音楽に合わせて身体を動かす。その生徒の動作をじっと見つめる指導者が、藤代太極拳協会の代表を務めている大沼富子さんである。
【太極拳との出会い】
30年ほど前に都内から取手市(旧藤代町)に引っ越してきた大沼さんは、夫が情報紙で見つけた「太極拳を学ぶ会」に通い始める。今まで運動にはあまり縁がなかった大沼さんが、主婦の習い事として始めた太極拳だった。「最初は、ゆったりしているなという印象で、自分にはどうかなと思いながら習い始めました」。太極拳を学ぶ会の村瀬大翼先生から指導を受け、諸先輩が気持ちよさそうに動いている姿を見て、自分もあんなふうに出来たらいいなと思ったそうである。
太極拳の型では最も普及している「二十四式太極拳」は、1から24の動作からなり、その数から二十四式と呼ばれている。「まずは動作の順番を覚えることから始まって、家でも練習をしました。最初は難しいけれど、音楽に合わせて、1から24まで「二十四式」一つひとつの動作がつながって出来るようになったら楽しくなりましたね」と大沼さん。
「太極拳を学ぶ会」で学んで5年が過ぎた頃、中国十大武術名師の一人である李天驥老師の愛娘で、日本太極拳界の第一人者でもある李徳芳先生から指導を受ける。現在も村瀬先生と李先生のもとで研鑽を積んでいる。「李先生からは専門的な知識と基本動作、手法などを学んでいます。各地で指導をしている仲間が集まるので、刺激にもなります。李先生の指導は厳しいけれど、楽しいですね」と大沼さん。
その李徳芳先生から「あなた、大会に出てみない?」と声をかけられる。全日本武術太極拳選手権大会、初めて出た大会で大沼さんは6位入賞を果たす。3回目の出場で優勝、全日本チャンピオンとなった。
【太極拳教室始まる】
大沼さんが太極拳を学んでいるのを知った近所の方から「太極拳を教えて」と声がかかる。近くの公民館を借りて、12名ほどで「太極拳教室」を始めたのが今から20年ほど前。太極拳の良さを伺うと、健康によく、体力に限界がないので、年齢を重ねても出来ること。長年の経験とともに風格がつき、動作に人柄も表れるのだという。また、今まで何もスポーツをしていなかった人でも出来るようになることや、動きがゆっくりとしているので、考えながら身体を動かすことができ、脳も活性化されることなどがあげられる。運動としては、身体や心臓に負担が少ない運動で、決してハードではないが、筋肉もつき血流もよくなる。「じわっとした汗が出て、心地よい疲れがあります。終わった後にさわやかな気持ちよさが残るんです」。
また、大沼さんは練功十八法という中国の健康医療体操の指導員も務めている。練功十八法は中国で医療として作られた体操で、首・肩こり、腰痛などの予防と治療が出来る。30年来のコリが治ったという人もいるそうだ。
太極拳の指導を始めた頃は、指導の難しさに直面する。間違ったことを伝えないように、細かいこともきちっと教えなくてはと考え指導をするのだが、家に帰り「こう教えれば良かった、ああしたらもっと分かりやすかったのでは」と反省する時も。試行錯誤をしながらも、言ったとおりに生徒が動いてくれて、少しずつ正しい動作になっていくと嬉しいと語る。
人にはそれぞれクセがあって、まっすぐ立っているように見えても、ゆがんでいる人が多いらしい。足の裏に重心を落とし、まっすぐ立つことを意識する。太極拳で姿勢が良くなったという人が多い。
【たくさんの人に支えられて】
最初に始まった木曜日の相馬公民館での教室から、今では指導者も5名に増え、会場も藤代武道場、藤代公民館、高須体育館・山王公民館・水海道坂手公民館とあちこちに広まった。今年は男性シニアによるチーム『海援隊』も出来て、熱心に練習に励んでいる。
取材の日には10月31日に行われる大表演会に向けて、合同の練習が行われ各教室の仲間が集まった。生徒の動きを真剣に見つめる大沼さん。生徒さんからは「先生の魅力で百人を超える人が集まっています。いつも笑顔でにこやかな先生です」と慕われている。
指導にあたっては公平であることを心掛けているという。「生徒さんにいかにうまく伝えるか、内面的なものを、どう動作に表すかが課題です」。今でも李徳芳先生に学びながら、指導者仲間と、動作をチェックし合う。内面的なものをどう表現するか、これが一番の課題である。
「手を動かすだけならそんなに難しくないですよね。でも手の動きひとつでも、自分が持つ『気』を、足の裏から背中を通し、手に現れるよう意識したら、動きが全く変わってくるんです」。大沼先生は生徒に「足の裏を感じなさい」と言葉をかけるそうである。
20年の歴史を振り返ると「もうこんなに来たのかという思いがあります。長いようであり、短いようでもある。今まで、たくさんの人に支えられてやってきました。仲間はみなさんいい人ばかり。助けてくれる人がたくさんいるので、こうして続けられたのだと思います」。自然の流れを大切にしながら太極拳を楽しみ、体験教室などのイベントを開催し多くの方に太極拳を知ってもらい、今後は若い後継者を作っていきたいと大沼さん。
大沼 富子 Tomiko Onuma
1983年 「太極拳を学ぶ会」村瀬大翼先生から太極拳を習い始める。
1984年 中国の健康医療体操「練功十八法」の指導員となる。
1988年 日中太極拳交流協会に入会、李天驥老師の愛娘、李徳芳先生から太極拳を学び現在に至る。
1989年 全国太極拳交流大会で金賞
1990年 取手市(旧藤代町)で太極拳教室を開く
1993年 全日本武術太極拳選手権大会出場24式太極拳で優勝
1995年 (社)日本武術太極拳連盟公認「A級指導員」合格、太極拳技能検定三段合格
1998年 日中太極拳交流協会「上級指導員」取得
毎年、全日本武術太極拳選手権大会では上位入賞を果たす
社)日本武術太極拳連盟公認「1級審判員」、太極拳を学ぶ会「師範」
■インフォメーション
藤代太極拳協会
20周年記念大表演会
ゆったりおおらかな太極拳の世界をお楽しみ下さい。
日時/10月31日(日)9時30分から12時
会場/藤代スポーツセンター
取手市椚木15
内容/会員による表演
体験コーナー…練功十八法(中国の健康医療体操)を体験
模範演技…二人の元全日本チャンピオン、大沼富子さんと酒井みどりさんによる模範演技
入場無料
問合せ/0297-74-6065小森、0297-83-5299橋爪
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