vol.17:ふとんのマスダ 店主 増田 敦司

vol.17:ふとんのマスダ 店主 増田 敦司

  • 2023年5月31日 
  • (0) 
  • Facebook
  • Twitter

みなさんは、どんな寝具を使っていますか?

ライフスタイルの変化に合わせて、布団やベッドなど、寝具のあり方も変化していますね。

つくばみらい市にある寝具専門店「ふとんのマスダ」では、職人が日本の伝統的技術を継承し、昔ながらの和布団作りやオーガニックコットン100%の布団作りなどの取り組みをされていると伺い、店主の増田敦司さんをおたずねしました。

職人が日本の伝統的技術で手作りする「ふとんのマスダ」 

寝具専門店の3代目だそうですね。

東京で働いていた祖父は、戦争の折に現在のつくばみらい市へ家族と共に疎開し、1947年に糸と「わた」を製造販売する「増田綿店」を創業しました。

父の代で事業を拡大し工場を建て、現在の「ふとんのマスダ」の基礎ができました。

私は、東京都板橋区にあった東京蒲団技術学院で和布団を作る職人・寝具製造技能士となり、今から30年ほど前に3代目として家業を継ぎました。

伝統的な和布団をお作りですね。

年配の方には、ゆっくり眠るなら伝統的な和布団で、という方もいらっしゃいます。

「ふとんのマスダ」では、畳だけでなくベッドやマットレスとも併用できる和布団も作っているんですよ。

また和布団は、望ましいタイミングで打ち直しをすることで何十年も使えるので、環境を守ることにつながります。

以前、茨城県つくば市の「和布工房 はんてん屋」で自分のはんてんを作ったのを機に、福島県産の会津木綿の魅力に惹かれるようになりました。その当時、会津では布団使われていないと知り、会津木綿を側生地に使った和布団や座蒲(ざふ)を作るようになりました。

他にも日本製の優れた素材として、静岡県の遠州木綿や、岡山県産の倉敷デニムも取り入れています。

可愛い小さな座布団が並んでいますね。

右側の丸みのある座蒲(ざふ)は、禅僧が坐禅を組む際に使用する坐禅用座蒲団で、ヨガにも使われます。左側の小さな丸いものは正座用の座布団。

木綿の着物幅をそのまま生かした小座布団も作っています。

店頭だけでなく、ハンドメイド通販サイトCreemaでも販売していて、ご好評いただいています。

どれも、お客さんが私が想定していた以上の使い方をされています。例えば、座蒲や正座用座布団はクッションや小さなお子さんの椅子代わりに。小さい座布団は、ダイニングの椅子に乗せたり、ピクニックなどに持ち運んで使ったり。私自身、自分が作ってみたい・面白いと思った商品を作っていますので、お客さんの感性で広がりのある使い方をしてもらって嬉しいですね。

和布団だけではなく、「わた」も扱っているそうですね。

「ふとんのマスダ」では「増田製綿工場」として「わた」の製造販売も行なっています。

木綿の「わた」は、綿の実を収穫後、圧縮された状態で主にインドやタンザニアから輸入しています。開綿機(かいめんき)という機械を使って、圧縮されてカチコチの状態からフワフワの雲のような状態にするんですよ。

ほかにも、摘み取った状態の綿の実から種を取り除き加工する「綿繰り」や、綿をシート状のふとん綿に加工する「綿打ち」のサービスも行なっています。

手芸クラフト・撮影美術用などとして、綿だけでなく、麻、絹、パンヤなど様々な素材の「わた」も扱っています。

オーガニックコットン100%の布団の取り組み

オーガニックの布団を作っていると伺いました。

20年以上前に、化学物質過敏症の強い症状のあるお子さんを持つ方からオーダーをいただいたのがきっかけです。

私もそれから詳しくなったのですが、化学物質過敏症では、身の回りの色々な化学物質が原因で、頭痛やだるさ、皮膚症状など様々な身体症状が出るそうです。

排気ガス、柔軟剤や芳香剤、消臭剤などだけでなく、洋服の絵柄プリントに使われている化学染料や、綿製品の綿を育てる過程で使用された農薬でも影響があると。

先述のお子さんは、一般的な布団ではよく眠ることもできず、農家の方がたまたま保存されていた古い和布団を譲り受けて、ようやく安眠できていたそうです。そのご苦労から、お子さんをふっくらした安全な布団に寝かせてあげたい、という親心がよく伝わりました。

オーガニックの布団について調べるうちに、オーガニック布団を作っている布団屋さんを見つけ、思い切って問い合わせてみたんです。当然ですが、「何年もかけて積み上げたノウハウを見ず知らずの人に教えられない」と断られました。でも、布団関係なのでもしかしたらつながりがあるかもしれないと思い、東京蒲団技術学院の先生に尋ねてみたんです。運よく先生の知り合いだったのでご紹介いただき、詳しく教わることができました。ありがたいことにその布団屋さんとは継続的に取引するようになり、今では「増田製綿工場」で加工したオーガニック綿を納入しています。

オーガニックコットン100%布団販売へ

オーガニックコットン100%の布団を作るために、日本オーガニックコットン流通機構(NOC)の認証を受けた素材を仕入れました。

ようやくオーガニックコットン100%の布団を1組作り上げることができ、オーダーいただいたお客さんにはとても喜んでもらえました。

そのようなご縁もありNOCを通じてオーガニック布団の依頼を受けるようになり、オーガニックコットン100%の布団製造販売が軌道に乗ってきました。

オーガニック布団作りで気をつけることはありますか。

化学物質過敏症の症状が強い方は、布団の糸に使われた農薬ですら影響があるため、綿だけでなく糸、側生地など全ての材料をオーガニック100%で作る必要があります。

けれど、ただ材料をオーガニックにしただけでは、化学物質過敏症の方が安心して使える布団にはならないのです。

製造工程、保管環境、梱包方法、どの過程でも布団に化学物質が付着しないようにする必要があります。「ふとんのマスダ」では、私や家族が普段使う洗剤やシャンプーなども全て無香料のものを使用しています。細やかな配慮をして作っていますので、全国からお問い合わせをいただいています。

伝統技術の継承への思い

これからの「ふとんのマスダ」について、教えてください。

未来へ伝統技術を継承しなければ、といった気負いはないですが、もし和布団の技術を身につけたい方がいらっしゃれば職人の技術をお伝えしたい、と思っています。

オーダーに応じて、和布団やオーガニックコットン100%の布団製造販売も継続していきますし、今後も日本の伝統的で優れた素材を用い、品質にこだわった良いものを提供していきたいですね。これからも、座蒲(ざふ)のように、和布団を作る技術を使って自分が面白いと思うものづくりに挑戦していきたいです。

伝統を守りながら新たなものづくりに挑戦している「ふとんのマスダ」の増田敦司さん。良い素材で品質の良いものを作るという理念が、その商品が選ばれる理由ではないでしょうか。

梅雨明けから年末・年始にかけては布団作りが忙しいそうですが、3〜6月はマルシェなどイベント出店もしているとのこと。ぜひ一度、「ふとんのマスダ」の商品を手にとってみてはいかがでしょうか。

ふとんのマスダ

所在地:〒300-2445 茨城県つくばみらい市小絹218(Map

TEL:0297-52-3026

営業時間 :10:00〜17:00

定休日:日曜・祝日

Email:info@tsukuba-cotton.jp

HP:https://tsukuba-cotton.com/

*イベント出店については、ホームページ等から最新情報をご確認ください*

関連タグ

アバター画像

シンヴィング編集部

1994年創刊の地域情報紙シンヴィング。 もっと『守谷』『取手』『つくばみらい』を合言葉に茨城県南地域の情報をお届けします。

投稿者関連記事

Comments
コメント

※は必須項目です。

CAPTCHA